コンタクトレンズってお店で買うと高いですよね。とくに1dayは、1箱で3,000円を超えるものもあるので経済的な負担になっていると感じる方も多いのではないかと思います。
「あれだけ高いんだから材料費も高いんだろうなー」と思って原価を調べてみると大した額ではないのはよくある話ですね。
コンタクトレンズの原価って果たしていくらなんでしょうか。原価と販売価格のあいだにはいったいどれだけの価格の差があるのでしょうか。今回はその謎に触れてみたいと思います。
目次
コンタクトレンズの原材料と原価
コンタクトレンズの原材料はハードとソフトで異なります。ハードに使われるプラスチックはポリメチルメタクリレートと呼ばれる硬いプラスチックで、ソフトに使われるプラスチックはポリヒドロキシエチルメタクリレートというゲル状の化合物です。
上でも書いた通り、コンタクトレンズの販売価格は安くありません。そのため、コンタクトレンズの製造には結構なお金がかかっていると思う方が多いのですが、実は1枚のコンタクトレンズを作る値段は、ハード・ソフト問わず数円~数十円程度とかなり安いです。高いものでも原価30円を超えるようなものはなかなかないでしょう。
どうして数十円の原価が数千・数万円といった額にまで跳ね上がってしまうのか
コンタクトレンズの原価と販売価格とのあいだにこれまでの差が生まれてしまう理由にはさまざまなものがあります。
メーカーと小売店による利権の問題だったり、医療品をあまり安くしすぎるとユーザーの不信感が仰がれてしまうなどという信用の問題だったり、「多くのユーザーに必要とされるアイテムは価格競争が起きにくく価格が下がりにくい」などといった市場の原則もコンタクトレンズの価格が下げられない理由に関係していると言われています。
しかし、コンタクトレンズの価格に最も大きな影響を与えているのは、コンタクトレンズの製造から販売に至るまでの過程で生じるさまざまな経費です。その経費をコンタクトレンズの価格に少しずつ上乗せしているので、コンタクトレンズの価格の高騰に拍車がかかってしまっているのです。
実際どんな経費が上乗せされているのか
それでは、コンタクトレンズ販売価格に、どのような経費が上乗せされているのかを具体的に見ていきましょう。ざっくりまとめると、以下の通りになります。
- 小売店の経費
- 研究開発費
- 医療サービス費
- 輸送費・包装費
小売店の経費
経費と聞いて最もイメージしやすいのが店舗の運営にかかる経費ではないでしょうか。
人件費、店舗家賃、広告費、各種税金などが主なものです。
これら経費について興味深いツイートを発見したのでちょっとシェアしてみたいと思います。
原価厨の言う利益と、一般的な意味での利益と、会社法人としての利益の違いを簡単に図にしてみた。会計上はだいたいこんな感じです pic.twitter.com/l6oxxQGrJu
— あれくしゃーP@秋ゲムマ申し込みました (@Aleksherr) 2016年8月24日
画像左から順に、「原価こんなに安いのに店の値段は何であんなに高いの!」という考え方をしている人が想像している利益、一般的な意味での利益、その利益から会社法人として残った利益を表した図です。
このような絵を見せられてしまうと、もう「原価こんなに安いのに!」とは言えませんよね。販売店もメーカーもなかなかシビアな世界な世界で頑張っているんです。
研究開発費
コンタクトレンズの販売価格に上乗せされているのは、何も小売店の運営にかかるお金だけではありません。コンタクトレンズの研究開発費その1つです。研究開発費とはメーカーがコンタクトレンズを開発・製造する際にかかる経費です。
コンタクトレンズは、眼鏡と違って角膜に直接装用する高度管理医療機器です。そのため、安全であることはもちろんのこと、ユーザーの不快をやわらげ、極力負担をかけない高い品質が要求されます。
良品質のコンタクトレンズを生産する工場に、新たな製品を開発する研究所。そういった施設を運営する費用の一部が、コンタクトレンズの価格に上乗せされているのです。
医療サービス費
主に販売店と眼科で発生する経費です。
コンタクトレンズは何の知識もなしにそのまま使用できるものではありません。検査を受けなければ度数も合わせられませんし、ベースカーブなども合わせられません。つけはずしも、まったくの知識ゼロの状態から行うのは難しいでしょう。
そのため、コンタクトレンズを利用する際は眼科で私のような眼科検査員から使い方の指導を受ける必要があります。
たとえば、販売店や眼科で使われるトライアルレンズ(お試し用のコンタクトレンズ)はメーカーから無料で提供されているものです。このトライアルレンズの提供のためにメーカーがまかなう費用が医療サービス費に当たります。
輸送費・包装費
現在、日本の市場に流通しているコンタクトレンズのほとんどは、海外の工場で製造されたものです。
世界でもトップシェアを誇るジョンソンエンドジョンソン、アルコン(旧チバビジョン)、クーパービジョンなどは日本にも法人を持っていますが、そこで製品が作られることはありません。基本的に全てのコンタクトレンズは海外のメーカーから輸入されることになります。
輸送されてきた製品はまず販社(メーカーから大量に製品をまとめ買いしている会社)に渡り、それから日本のメーカーに渡り、最終的に小売店へとやってきます。もちろん、製品が場所を移すたびに輸送費が製品の価格に上乗せされます。
輸送費と比べると包装費というのはあまりイメージが湧かないかもしれませんが、コンタクトレンズは生身の状態で海外から輸入され、日本の工場で日本語版パッケージに包装されます。包装日はその際に発生する手数料のことです。
ネット通販が安い理由
本題とはやや話が逸れますが、せっかく話の材料がそろったので、ちょっとコンタクトレンズのネット通販にも触れてみたいと思います。
ネット通販を利用してコンタクトレンズを買う方は年々増え続けています。しかし、まだネット通販に抵抗がある方も少なくなく、そのような人たちの中には「ネット通販が安いのは粗悪を扱っているからだ」という考え方をしている方も少なからずいるようです。
もちろん、実際はそんなことはありません。たしかに実店舗で販売されているものとネット通販で販売されているものの価格を比べるとかなりの価格差があるので不振に思ってしまう気持ちもわかります。実際の販売店で取り扱われているものもネット通販で取り扱われているものも箱の中身はまったく同じものです。中身はまったく同じ工場で作られています。
では、なぜ価格差が生まれるのか。ここまでこの記事を読んでくれた方なら何となく察しがつくかとしれませんが、実店舗とネット通販の販売価格に大きな差があるのは、製品に上乗せされる経費が大きく異なっているからに他なりません。
たとえばネット通販は、製品の選択から購入まで一切医療機関を必要としないので、医療サービス費がかかりません。
また、ネット通販は実店舗に比べ少ない人員・狭いスペースで運営できるので、人件費や店舗家賃などの一般管理費も大幅に安くなります。
英語版パッケージを取り扱っているネット通販ショップに関しては、包装費がまるごとカットでき、また、製品を海外メーカーから直接輸入することができる(販社、日本のメーカーを解す必要がない)ので、輸送費も大幅カットするのことができるのです。
ネット通販でコンタクトレンズを使うリスク
しかし、ネット通販でコンタクトレンズを買う場合、実店舗で購入するのに対し2点ほど気をつけなければいけない点が出てきます。これから紹介する2つのリスクは、ネット通販でコンタクトレンズを購入している方、および購入を考えている方にはぜひいつも考えておいてほしいものです。
1. 健康面のリスク
ネット通販を利用してコンタクトレンズを購入するようになると処方箋が必要ないので、眼科に出向く機会が極端に減り、眼に何か異常が生じていた場合に気づきにくくなります。コンタクトレンズそのものの正しい使い方を忘れ、知らず知らずのうちに危険を招くような使い方をしてしまっている方も多いです。
眼の病気の中には対処が遅れるとその後の生活に甚大な被害を及ぼすようなものもあります。眼に大きなトラブルが生じその後の人生に絶望するようなことがないよう、ネット通販を利用する場合でも、眼科には適度に足を運び、診察やコンタクトレンズ使用に関する指導を受けるようにしましょう。
眼の健康を維持しつつコストを抑えたいという方は、半年に一度眼科で検査を受け、購入はネットで、というようなサイクルを組むといいでしょう。眼科で処方箋をもらったそれをそのまま家に持ち帰ってネットで買う。再度言いますが実店舗も商品とネット通販の商品も中身は同じなので、非常に合理的な方法です。
コンタクトレンズ選びに関しては、当サイトでは以下のようなランキングを用意しています。各製品の特長や安く買えるショップなども紹介しているので、もし興味があれば、レンズ選びの際などにぜひ参考にしてみてください。
2. きちんと製品が届くかどうかのリスク
ネット通販が流行り始めて間もないころは、雑な運営をしているネット通販ショップも多く、よく「お金を振り込んだのに商品が届かない」「頼んだのと違うものが届いた」などといったことが起きていました。
今ではそういった雑なショップはだいぶ少なくなりましたが、電話対応の質、アフターケアの質、届くまでの速さなどといった点では、まだ良質なショップとそうでないショップの差は大きいように思います。
そのためネット通販ショップを利用してコンタクトレンズを買う場合、ユーザーはできるだけ誠実で正確性の高いショップを自分で選ぶ必要があります。
こちらも上の項目と同じよう、参考になるページを用意してみました。
質の良いショップのみをまとめたページです。ぜひ参考にしてみててください。
まとめ
今回は「コンタクトレンズの原価っていくら?」という題で記事を書き進めてきました。最後だいぶ話題がそれたので「そんな話だったっけ」という方もいるかもしれませんが、ひとまず、コンタクトレンズの価格の大半は実店舗が販売を行うためには欠かせないものであり、決して利益としてたくさん抜いているわけではないということがわかっていただけたのではないかと思います。
コンタクトレンズに限らず原価と販売価格に大きな差があるものは、その差がいかにして生まれたのかを考えてみると面白いかもしれませんね。
たしかに、中にはぼったくりと言えるような価格で販売しているお店もありますが(あんまり書くと怒られそうなので具体的なお店の名前は出しませんが)、原価と販売価格の差は皆さんが思っているほど店側に利潤をもたらしているというわけではないということを、頭の片隅にでもいれておきましょう。