コンタクトレンズの長時間装用……何が問題?

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コンタクトレンズの長時間装用は、眼の健康的に良くありません。

でも、具体的にどう良くないかと聞かれても、答えられない方も多いはず。

そこでこの記事では、コンタクトレンズの長時間装用の問題点と、それにより発生するさまざまな症状、そして、それらの中で最も恐ろしい「角膜内皮障害」について書いていきたいと思います。

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コンタクトを長時間装用していると何が問題なの?

コンタクトレンズの長時間装用は、眼にさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。長時間装用によって引き起こされる主なトラブルは、以下の通りです。

  • 乾き目
  • 角膜が傷つく
  • アレルギー性結膜炎
  • 細菌性結膜炎
  • 癌裂斑炎
  • 角膜内皮障害

ここでは文字数の関係上、各トラブルの具体的な説明は省かせていただきますが、とりあえず言えるのは、長時間装用が原因で起こることに良いことは一つもないということです。いつどの症状が眼に表れるかもわからないので、長時間装用は、可能な限り避けるに越したことはありません。

ちなみに、上記した症状のうちのほとんどははいずれも自覚しやすいものです。かゆみや痛み、充血、大量の目ヤニなどの症状が出るので、大抵は自分で気づきます。しかし、コンタクトレンズの長時間装用が引き起こすトラブルの中には、自覚症状がまったくなく。ほとんど無自覚のうちに少しずつ侵攻していく恐ろしいものがあります。

それが、この記事の冒頭でも名前をちらっと紹介した「角膜内皮障害」です。

角膜内皮細胞と角膜内皮障害

角膜内皮障害について知る前に、一つ知っておかなければいけないことがあります。

それは、角膜内皮細胞という細胞についてです。角膜内皮細胞は、その名の通り角膜(黒目)の中にある細胞です。黒目の内側に小さな六角形が、タイルのようにびっしり敷き詰められている図をイメージしていただければいいでしょう。

角膜内皮細胞が持つ眼の中での役割は、主に角膜の代謝や透明性を維持しています。つまり、眼が傷ついた時にそれを修復したり、私たちがクリアな視界で辺りを見渡せるのは、この角膜内皮細胞のおかげということです。

角膜内皮細胞は赤ちゃんの時が最も多く、老化と共に減少していきます。つまり、体の他の細胞と違い、分裂して増えていくわけではないということです。一度減ったら一方通行。二度と再生しない、大切な細胞なのです。

角膜内皮障害とは、ある一定数以下まで角膜内皮細胞が減少し、それにより、様々な症状が生じてしまった状態のことを差します。

角膜内皮障害の具体的な症状としては、眼のむくみ、痛み、視界のかすみなどが挙げられます。初期段階では目薬などで点眼薬などで症状を軽減できますが、悪化すると治療用コンタクトレンズを付けるか、角膜移植をしなければいけなくなります。

角膜内皮細胞は自然に減少していくもので、それを食い止める方法はありません。しかしいくつかの要因によりその減少が早まって しまうことはあります。たとえば黒目の表面を削り取るレーシック手術や、眼の外傷、ぶどう膜炎などの炎症、そして、コンタクトレンズの長時間装用による慢性的な酸素不足です。

角膜内皮細胞は、赤ちゃんの時には1ミリ平方あたり、約5,000個あると言われています。それが成長に伴い、緩やかに減っていきます。本来なら、成人している方でも1ミリ平方あたり2,500から3,000個は欲しいところですが、コンタクトレンズを毎日長い時間付ける生活を続けている方の眼だと、この数が2,000個以下になっていることも珍しくはありません。

中には、20歳という若さで60歳以上の方よりも角膜内皮細胞の数が少ない方もいます。その方の未来を考えると…恐ろしいですね。

角膜内皮障害による眼の手術への影響

角膜内皮細胞は黒目の代謝、傷の修復を担う細胞だと上に書きました。つまり角膜の手術を受けた後にその傷跡を治癒するのも、この細胞の役目だということです。

角膜内皮細胞があまりに少なくなってしまうと、術後の眼の治癒速度の低下、それに伴う感染症の発症へのリスクから、角膜を切除するあらゆる手術を受けられなくなってしまいます。

受けられなくなって最も困る手術は、おそらく白内障の手術でしょう。白内障とは高齢の方がかなり高い確率で発症する病気で、視界に白い濁りが生じ、非常にものが見づらくなる病気です。白内障が進むと、どんなに矯正を行なっても視力が0.5も出せなくなってしまいます。

現代では、白内障は手術で簡単に取り除けるため、さほど脅威ではなくなりました。しかし、それはあくまで手術ができればの話。角膜内皮細胞が減っているとその手術自体が行なえなくなってしまいます。

そうなったらもう方法は角膜移植手術しかありませんが、現在、日本でのドナー角膜提供数は非常に少ないと言われています。つまり移植手術には莫大なお金がかかるというわけですね。

角膜内皮障害の対策

私たちコンタクトレンズユーザーができる角膜内皮障害への一番の対策は、やはり装用時間を短縮することです。私たちが水の中にずっといると苦しくなるように、角膜の細胞も、コンタクトレンズにずっと覆われたままだと苦しくなり、やがては死んでしまいます。

もちろん、角膜にとって一番いいのはコンタクトレンズを付けないことですが、実際はそういうわけにもいきません。ならばせめて、長時間装用は控えるべきでしょう。長時間装用か否かを分けるおおよその目安としては、ソフトなら12時間ハードなら14時間といったところでしょうか。基本的にハードの方がよく酸素を通すので、ソフトよりも長く付けることができます。

眼科に来る患者さんの中には、眼科の人間がコンタクトレンズの装用時間の短縮を勧めると、「仕事してるからコンタクトレンズははずせない」と言う方が結構います。まあ、私も働いているのでその気持ちもわからなくはないですが、実際は、本当に限定された職種でない限り、コンタクトレンズの装用時間短縮は可能だと思います。

たとえば、装用時間が10時間を過ぎたら、トイレでコンタクトレンズをはずして眼鏡に付け替えるというのはいかがでしょう。私は装用時間を徹底しているので、10時間を超えそうだったら、眼科の検査室でコンタクトレンズから眼鏡に切り替えるようにしています。

コンタクトレンズは眼鏡にはない様々な利点を持った便利な道具です。しかし、眼鏡には眼鏡の(主に健康面での)利点が多く存在します。乾いて付け心地が悪くなったコンタクトレンズを無理に付け続けるよりは、眼鏡に切り替えてしまった方が気分的にも健康的にも良いでしょう。

コンタクトレンズの酸素透過率にも注目

酸素透過率とは、名前の通り、そのレンズがどれだけ酸素をよく通すかを示す値です。これはレンズのタイプがソフトかハードかで大きく異なり、さらには同じタイプの中でも、製品ごとにまったく違う値になっています。

どうしても長時間装用を避けられないという場合は、なるべく酸素透過率の高いレンズを選んで使うようにしましょう。そうすることにより、眼の酸素不足を軽減することができます。

ちなみにソフトとハードでは、基本的にハードの方が酸素透過性に優れています。しかし最近では、ソフトの方でも酸素透過率の高い製品が増えているので、ハードの方が絶対的に良いとも言えなくなってきました。

ソフトコンタクトレンズの酸素透過率が高いか低いかを判断する基準の一つに、素材がシリコーンハイドロゲルかどうかといった点が挙げられます。

シリコーンハイドロゲルは、ソフトコンタクトレンズの素材としては比較的新しいもので、従来素材に比べ3倍にも4倍にもなる酸素透過率を誇ることで注目を浴び、主流な素材の一つになりました。

一応、参考までに、ソフトコンタクトレンズの酸素透過率が一覧されたページへのリンクを張っておきます。

ソフトコンタクトレンズの酸素透過率ランキング

酸素透過率の高低で、角膜内皮細胞の減少のスピードも大きく左右されます。レンズ選びの際は、乾きに対する強さや付け心地を気にするのも大事ですが、そのレンズがどれだけの酸素を通すかにも注目してみるといいでしょう。