「物が二重に見える」というと、一番に乱視の存在が頭に浮かぶと思います。
でも実際は、乱視以外にもさまざまな原因が考えられます。
今回は物が二重に見える時の原因と、その対処法について書きたいと思います。
物が二重に見える原因
物が二重に見える時、疑うべき原因としては以下のようなものが挙げられます。
- 乱視
- 疲労
- 残余乱視
- 持ち込み乱視
- メガネおよびコンタクトレンズの度が合っていない
- レンズ表面の傷や汚れ
- コンタクトレンズの左右間違い
- 老眼
- 眼疾患
- 眼を細めてものを見ている
実にさまざまな原因がありますね。
このように一覧すると結構な数になりますが、各項目にざっと目を通せば「この項目は関係ないな」「この項目は関係ありそうだな」ということがわかると思います。
これから、上に挙げた項目について簡単に説明し、その対処法について簡単にまとめていきます。すべてを読もうとすると結構な量になってしまうので、自分に該当しそうな項目についてだけ読み、他は読み飛ばすようにしてください。
乱視
物が二重に見えるといえば、一番に思いつくのが乱視だと思います。実際、物が二重に見える原因として一番割合が大きいのが、乱視です。
乱視には個人差がありますが、基本的には、誰もが多かれ少なかれ持っているものです。乱視が本当にゼロの方と巡り会うことは、眼科で検査していても稀です。
自分は乱視がない、と思っている方でも、データを計測してみると若干の乱視があることが多いです。ただ、視力にほとんど影響が出ず、矯正する必要がなければ、「乱視がない」という風に扱われることが多いです。
乱視の対処法は、やはり矯正することです。
乱視用のメガネや、乱視用のコンタクトレンズを装用して見え方のブレを抑えます。
ただし、ちょっとものが二重に見えるからといってすぐ乱視用にしてしまうと、眼に対して度数が強くなり、逆に疲れたり、物が余計二重に見えたりする原因になってしまうこともあります。
そのため、軽度の乱視であれば無視、ある程度乱視が強ければ、若干弱めに乱視度数を入れてあげることが、眼にとっても望ましいと言えます。
疲労
誰でも多かれ少なかれ眼に乱視を持っているというのは上に書いた通りです。
眼が疲れてくると、乱視を感じる度合いが大きくなります。つまり、普段はあまり乱視を感じない人でも、眼に疲れが溜まれば、物が二重に見えるようになってくる可能性があるということです。
眼の疲労は、さまざまな要因で蓄積されます。ただ起きているだけでも、人は常にさまざまなものを見ているので、疲労が溜まります。
加えて、人は本を読んだり、スマホやパソコンなどのディスプレイを見たりします。特に後者は、近年騒がれているブルーライトの存在も相まって、眼に疲労が蓄積しやすい行動だと言えます。
このように、日々の生活で蓄積される疲労が、皆さんがもともと持っている乱視の度合いを大きくし、結果的に、物が二重に見える原因を作っているのです。
疲労による物のぶれの対処法は、やはり、疲労を蓄積しないようにすることです。読書をする時は明るく、適度な距離を保ち、適度な休憩を取る。パソコンをする時は、やはり同じことが言えますが、定期的に目薬を差して眼の潤いを保ったり、数十分に一度は眼を深く閉じて意識的に休ませてあげるといいでしょう。
パソコン・スマホの利用が多い方は、ブルーライト対策をしてみるのも一つの手ですね。ブルーライト対策といってもさまざまな方法があるので、興味のある方は、以下の記事を参考にしてみてください。
また、蓄積した疲労を休眠によって取り除くことも大切です。たくさん作業をしすぎたせいで物が二重に見えてしまっていても、寝て起きれば、ちゃんといつもの見え方になります。
仮眠でも充分な効果が得られるでしょう。
残余乱視
残余乱視(ざんよらんし)とは、文字どおり、残ってしまった乱視のこと。乱視用メガネや乱視用コンタクトレンズを使っていても、100%乱視が打ち消せるわけではありません。
特にソフトコンタクトレンズの場合は、メガネに比べて乱視度数の設定がかなりアバウトです。というのも、メガネなら0.25ピッチで乱視度数が用意されていますが、ソフトコンタクトレンズの場合は-0.75、-1.25、-1.75といった風に0.50ピッチでしか用意されていないので、細かな度数調整ができないのです。
残余乱視の対処法は、メガネやコンタクトレンズの度数をもう調整し直すしかありませんが、どれだけ処方技術が高い人がやっても、やはり限度というものはあります。
これに関しては、究極的なところまでいってしまうと直接の対処法がないので、疲労からくる乱視を抑え、残余乱視を感じにくくするなど、周りから固めていくしかありません。
あとは妥協するしか…‥。
よほどのことがなければ、妥協できるのではないかと思います。
持ち込み乱視
これはハードコンタクトレンズのみ起こる現象です。
ハードコンタクトレンズは、付けるだけで乱視をほぼ打ち消してくれます。
その仕組みは、ハードコンタクトレンズをつけることによって角膜とレンズのあいだにできる涙の層のおかげなのですが、これが乱視を打ち消すことによって、本来は感じなかった乱視を感じるという面倒な事態が発生します。簡単に言ってしまえば、これが持ち込み乱視です。
持ち込み乱視は、上に書いた残余乱視とすこし似ていて、完全に矯正しきることはできません。高い処方技術を持った検査員でも、完全にゼロにすることは難しいでしょう。
ただ、レンズのサイズを変えてみたり、種類を変えてみたりすることで、意外と感じなくなったりする場合もあるので、検査員に他のレンズのトライをお願いしてみるのもいいでしょう。
メガネおよびコンタクトレンズの度数が合っていない
レンズ度数が強すぎること(過矯正)やレンズ度数が弱すぎること(低矯正)、乱視の度数や軸度などが合っていないことなどは、物が二重に見えたり、そもそも眼が疲れたりする原因になります。
過矯正はわかるけど低矯正でも眼が疲れるの、と思う方もいるかもしれませんが、度数が弱いレンズを付けていると人は自然と眼を細めてしまうので、それが疲労や、ものが二重に見える原因になってしまうこともあります。
対処法としては、納得がいくまで眼科や眼鏡屋で調整するしかありません。
また、人の視力は一定ではないので、定期的に視力を測りレンズ度数を最適にしておくことも大切です。特にメガネはコンタクトレンズに比べ交換頻度が低いので、見えづらさや疲れを感じるようになったら、度数を見てもらうといいでしょう。
ネット通販でコンタクトレンズを買っている人にも同様のことが言えます。一年に一回程度は眼科に行きましょう。
レンズ表面の傷や汚れ
レンズ表面の傷や汚れも、物が二重に見える原因になります。
ただこれは、可能性としては低いかもしれませんね。レンズ表面に視界に影響するような汚れや傷があったら、二重に見えるというより単に見づらく感じると思います。
対処法は、いわずもがな、レンズの手入れを徹底すること。レンズに傷や落ちない汚れがある場合は、新しいレンズに交換することです。
コンタクトレンズの左右間違い
コンタクトレンズにのみ起こる現象ですね。特にハードコンタクトレンズ利用者に多いです。
眼科で働いていると、左右のコンタクトレンズを間違って付けている人がたまにやってきます。
左右で度数差が大きい人は間違えようがないかもしれませんが、度数差が小さい人は、間違えても気付きにくく、眼科でレンズの度数を検査して間違いが発覚することが多いです。
たとえ度数差が小さくても、度数が合っていないことに間違いはありません。コンタクトレンズの左右間違いは、見え方が悪くなったり、物が二重に見えたり、疲れやすくなったりの原因になります。
対処法は、まず左右間違いをしないように気をつけること。あとは、少しでも見え方に違和感があったら眼科に行くことです。眼科でレンズの状態をチェックすれば、レンズについた傷や汚れを発見し、その対処法を考えていくこともできます。
老眼
老眼が始まると、基本的に眼が疲れやすくなります。また、物にピントを合わせにくくなります。
物が二重に見えることは老眼の直接の症状ではありませんが、老眼と物が二重に見えることのあいだに因果関係はあるように思います。
対処法としては、まず、老眼を感じにくい環境作りが大切になるでしょう。老眼鏡、遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトレンズ、対処法はたくさんあります。老眼を感じ始めたら、これらアイテムは必須です。
実際は老眼が始まっているのに、「自分は老眼じゃない」と言い聞かせるのは、眼の疲労や、精神の健康を考えるとよくありません。
老眼を認めたくない気持ちはわかりますが、無理することで得られるメリットも冷静に考えれば少ないものです。老眼は40歳程度になれば誰でも始まるもの。そう考えて、しっかりと対策をして眼の負担を減らしていきましょう。
老眼について詳しく知りたい方は、以下の記事が参考になると思います。(※コンタクトレンズ利用者向け)
眼疾患
角膜浮腫、円錐角膜、角膜上皮障害、etc……。
ここまでに挙げた原因のどれも当てはまりそうにない、という場合、眼に何らかの疾患がある可能性が考えられます。
眼疾患がある場合の処置については、眼科や病院などにで処置を受ける以外に対処法はありません。
眼を細めて物を見ている
眼を細めて物を見ていると、細めるのをやめた時に、物が二重に見えることがあります。
そもそも眼を細めている状態というのは、視力的な意味で、眼に負荷がかかります。本来の眼の機能にとってもだいぶ不自然な状態なので、あまり望ましい状態だとは言えません。
特に近くの物を長時間眼を細めて見てから遠くを見ると、物のぶれ方がひどくなります。
私も子供の頃、近くを見るときに眼を細める癖があったのですが、その状態で2時間ほど宿題をやって顔を上げたときには、壁にかかっている時計や家族の顔などが、上下に二重にぶれて視界がたいへん気持ち悪い状態になりました。
対処法としては、まず眼を細めないように意識することです。ただ、すでに眼を細めるくせがついてしまっている方がいきなり直すのは難しいと思うので、自分の眼にとって最適な度数のコンタクトレンズやメガネを用意して、眼を細めなくても済むような状態を作りましょう。
まとめとして
今回は、物が二重に見える原因10つとその対処法について触れてきました。いかがだったでしょうか。
この記事にまとめた10の原因と対処法は、私が眼科で、実際に患者さんから「物が二重に見える」と言われた時に対処法として案内しているものです。
物の見え方については、突き詰めていけばキリがありません。乱視についても、記事中に書いた通り誰もがもともと少なからず持っているものですし、完全に打ち消すことも難しいので、最終的にはどこかで妥協する必要が出てくると思います。
ということを考えると、物が二重に見える時の究極の対処法は、あまり気にしないようにすることなんですよね。ただ、それではきっと多くの方が納得してくれないでしょうし、実際、気にせずにはいられないくらい物がぶれている方もいるので、このような記事を用意してみました。
この記事にまとめた対処法が、皆さんのアイライフの向上に役立てば幸いです。