コンタクトレンズや眼鏡の「度数」と「視力」は違う?

考える男性

コンタクトレンズの「度数」と「視力」は違います。

「そんなことわかってるよ!」という方のほうが多いでしょうが、眼科で話を聞いていると、たまに混合してしまっている人がいるのも事実。

「使っているコンタクトレンズの度数はいくつですか?」とこちらが尋ねた時に、「1.0ないと思います」と視力の数値を答えられる方がたまにいます。

別に悪いことではないですが、度数を聞かれて視力を答えちゃうのは、やっぱりちょっと恥ずかしいかも……。

というわけで今回は、確認の意味を込めて、コンタクトレンズの度数と視力の違いについて書いてみたいと思います。

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コンタクトレンズの度数とは?

指に乗せたコンタクトレンズ

コンタクトレンズの度数とは、そのレンズが持つ矯正力を表す値です。D(ディオプター)という記号で表されます。

「+0.75」「-5.00」などと小数点第二位まで表記され、0.25ピッチ(刻み幅)で数値が上がっていきます。ソフトコンタクトレンズの場合、ほとんどの製品が6.00Dを超えると0.50ピッチになります。これは、6.00Dを超えるような強い度数になってくると、たった0.25度数が動いた程度では見え方がほとんど変わらなくなるためです。

度数の前についているプラスとマイナスは、そのコンタクトレンズが近視用か遠視用かを表しています。プラスは遠視用のコンタクトレンズ、マイナスは近視用のコンタクトレンズです。プラスの方がマイナスより強いというわけではなく、プラスマイナス問わず、ゼロから離れれば離れるほど度数が強いということになります。

また、コンタクトレンズの度数には乱視度数と加入度数というものがあります。詳しく説明すると長くなってしまうので触り程度にしますが、乱視度数は文字通り乱視を矯正するための度数で、乱視用コンタクトレンズにのみ用いられます。加入度数というのは老視を矯正するための度数で、遠近両用コンタクトレンズにのみ用いられます。

コンタクトレンズの度数の上限はどこまで?

ソフトコンタクトレンズの場合、近視だと-12.00D程度、遠視だと+5.00D程度が一般的ですね。正直なところ、ソフトコンタクトレンズは矯正力が弱いので、近視度数が-10.00Dを超えてしまうと、矯正しても明瞭な視界は得られないかもしれません。

一方、ハードコンタクトレンズの場合は上限値が高く、たとえばこちらの「HOYAハードEX」などといったレンズは近視遠視問わず25.00Dというかなり強い度数まで用意されているものもあります。

視力とは?

視力表

眼で物体を識別する能力のことです。目力とか眼力とはまた違うものです。

視力にはさまざまな種類があります。たとえば動いている物体を識別する動体視力や、遠近感や立体感を正しく把握するために必要な深視力、手元の物に焦点を合わせるために必要な近見視力などといったものがあります。

もちろん、全ての視力について書いていると書く側の私も読む側の皆さんも日が暮れてしまうので、今回は一般的に言われる視力、すなわち静止した対象物を見る時に働く静止視力についてのみ話しします。

視力と聞くと視力検査で使うあの「C」のマークのことを思い浮かべる人もいるかと思います。あの「C」のマークは正式にはランドルト環といって、その名の通り、スイス人の眼科医であるエドマント・ランドルトという方が開発したものです。

ランドルト環には細かい規定があります。実は全ての環が同じ比率で、「直径:円弧の幅:輪の開いている幅=5:1:1」となるよう作られています。

日本の場合だと直径7.5mm、太さ1.5mm、幅1.5mmのランドルト環が基準となり、これを5メートル離れたところから正確に言い当てられると視力1.0ということになります。視力が1〜10までの分かりやすい数字で表されず、0.1や0.3などと細かいのは、「1.0」を絶対的な基準にしているからなんですね。

たとえば視力0.5相当のランドルト環は、視力1.0相当のランドルト環の倍の大きさになります。

最近は紙の視力表ではなく、機械の中に像を投影させる型の視力表が多いですね。これは機械により距離感を調節できるので、5mの距離を置く必要がなく、比較的狭いスペースでも検査を行なうことができます。

視力からコンタクトレンズの度数を割り出すことはできる?

前にこちらの記事でも書きましたが、ほぼ不可能です。ある程度の推測はできなくもないですが、そこで得られたデータはとても信憑性の低いものになります。

視力0.1以下になるとまずい?

眼科で働いていると結構こんな質問をされるのですが、そんなことはありません。コンタクトレンズを使っている方の大半は視力0.1以下です。

私が使っているコンタクトレンズは度数が-2.25D(コンタクトレンズの度数としては低い方)ですが、それでも私の裸眼視力は0.1ありません。つまり何が言いたいかというと、少し眼が悪ければ、視力0.1なんて簡単に下回ってしまうということです。

だからといって、視力0,04以下になるとまずいかというと、そういうわけでもありません。裸眼で何も見えないのは困るでしょうが、それ以外の問題は特にありません。

視力がずっと下がり続けるとどうなる?

視力がどんどん下がる、ということを気にされている方もいますが、視力がずっと下がり続けてそのまま失明ということはまずありません。それに、視力が下がり続けているといっても必ずどこかで緩やかになります。

よほど眼を酷使したりしていない限り、同じ速度で永遠に下がり続けるといったことはありませんのでご安心ください。

視力を回復させることはできる?

たとえばレーシックやオルソケラトロジーなどといった手術や療法を行なえば視力を取り戻すことはできます。しかし俗にいう視力トレーニングで視力を回復させることはほぼできないと私は考えています。これに関してはWikipediaでも触れられていたので、少し引用してみますね。

俗に言う視力回復「トレーニング」と称するものは医療行為ではなく、医学的根拠がない物が多い。またその際に使用される、ピンホール現象を用いた眼鏡などの機器も、国が認可した「医療機器」ではない。サプリメントや健康器具のように、薬事法及び景品表示法に違反するような宣伝を行う企業も多く存在する。

私としてもこの記述に異論はありません。たまに遠くのものを見たり野山など緑色のものを見ると視力低下が抑制できる、視力が回復するなどと言っている眼科医もいますが、たぶんその方独自の考え方というか、医学的な根拠があってのことではないと思います。

まとめとして

今回はコンタクトレンズの度数と視力の関係だけでなく、度数と視力それぞれに簡単なQ&A的なものを付けてみました。

この記事により皆さんの疑問が少しでも解消されれば幸いです。