ソフトコンタクトレンズのベースカーブ(BC)が0.1変わるくらい大したことはない

ソフトコンタクトレンズ ベースカーブ

コンタクトレンズを選ぶ時に参考にする数値にはさまざまなものがあります。

ベースカーブ(BC)、レンズ直径(DIA)、含水率、酸素透過率……。

このうち、ベースカーブやレンズ直径に関しては、装用感にも深く関わってくる部分なので、気にされる方も多いと思います。

でも、実際のところ、ベースカーブってつけ心地にどれくらい影響を及ぼすものなのでしょう。

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ベースカーブが0.1mm変わる程度では体感的な変化・健康上の変化はほとんどない?

ネット上のコンタクトレンズに書かれた記事や、SNS上の投稿などを見ていると、たまにこのようなことが書かれているのを目にします。

「旧製品はBC8.5で、新製品はBC8.6なので注意!」

うーん。

いったい何をどう注意すればいいのか、というのが私の正直な感想です。

もしかするとこのようなことを書いた方は、眼とレンズのベースカーブは非常に綿密な検査によって判定されており、少しでも「正解」から外れたベースカーブの製品を使うと眼によくないと思われているのかもしれませんね。

でも、そんなことはありません。

実際、ソフトコンタクトレンズのベースカーブが付け心地にもたらす変化は小さなものです。含水率やレンズの素材が同じであれば、BC8.5がBC8.7に変わってもほとんど違いを感じないという方がほとんどでしょう。

そもそも、ベースカーブの値を0.05刻みで細かく設定できるハードコンタクトレンズと違い、ソフトコンタクトレンズは基本的に1つの製品に1つしかベースカーブが用意されていません。

これは、ソフトコンタクトレンズはハードコンタクトレンズに比べはるかに柔軟性が高く、多少のベースカーブの違いであれば難なく対応できるということを意味しています。

たとえば、コンタクトレンズ世界シェア1位のメーカーであるジョンソンエンドジョンソンの1dayは、すべてBC8.5とBC9.0の2企画で統一されています。しかしジョンソンエンドジョンソンの製品を使っているユーザーすべての眼にBC8.5とBC9.0がピッタリかと言えば、そうではありません。

もし本当にピッタリBCが合っていないと使えないようなものであれば、ジョンソンエンドジョンソンだってもっとBCの分布を分散させるよう製品を作っているはず。

今までBC8.5のワンデーアキュビューモイストを使っていた人が、BC8.6やBC8.8の製品を使うことができないのかと言われれば、まったくそんなことはないのです。

以上を踏まえると「旧製品はBC8.5で、新製品はBC8.6なので注意!」という考えは、コンタクトレンズに対する知識がない人のものである、ということができるでしょう。

一度でも眼科で働いたことがある人間なら、間違いなくそんなことは言わないはずですからね……。

では、実際どれくらいならベースカーブを変えてもいい?

これは感覚によるところが大きいので具体的数値を出すのは難しいですが、ベースカーブに関しては、自分がいま問題なく使えているコンタクトレンズのベースカーブ±0.2mm以内であればまず問題ないと考えていいでしょう。

たとえば、今BC8.7mmの製品を使っているのであれば、BC8.5mm〜BC8.9mm程度であれば十分許容範囲ということですね。

ただ、あくまで±0.2mm以内というのは私の感覚に基づいた参考値であって、実際に重要になってくるのは実際のつけ心地や眼のフィット感です。

前者に関しては自分の感覚に基づくものなので、実際につけてみて問題がなければOKということでいいでしょう。

後者に関しては自分である程度しか判断することができないので、気になるようであれば、眼科でレンズのフィット具合を見てもらうといいでしょう。眼科にはスリットランプというコンタクトレンズのフィッティング(きちんと角膜の形状に合っているかどうか)を見る機械があります。

スリットランプ検査員に眼の上でのレンズの動きを見てもらえば、レンズが眼に対して、きつめ(タイト)であるか、ゆるめ(ルーズ)であるか、そのどちらでもないかを判断してもらうことができます。

以上のことから言えるのは、フィッティングの良し悪しを数値だけで判断することはできないということです。今までBC8.5のレンズを付けていた人でも、別のBC8.5の製品に変えた時に合わなくなる可能性は往々にしてあるのです。

数値よりも大切なのは、実際につけてみてどうか、ということなのです。

ベースカーブ以外にも気にしなければいけない要素はたくさんある

レンズを選ぶ際に気を付けなければいけない要素は、ベースカーブだけではありません。

上にも書いた通り、ベースカーブの値というのはそれなりに融通が効くものです。レンズを選ぶ際にベースカーブのことでそこまで神経質になる必要はありません。レンズ選びの幅を広げ、より自分にあった製品を見つけるためにも、他の要素にも気を配り、視野の広いレンズ選びをしてみましょう。

コンタクトレンズのつけ心地や、製品そのものの質を決める要素には以下のようなものがあります。

レンズ素材

ソフトかハードかの違いだけでなく、同じソフトの中にも、従来素材かシリコーンハイドロゲル素材か、という違いがあります。最近主流になっているのは、酸素透過性が高く、眼に負担の少ないシリコーンハイドロゲル素材です。

エッジ(レンズの縁の部分の作り)

レンズの淵の部分の鋭利さを表すものです。数値で表すことができないので、レンズデータを見ても値は乗っていません。

[caption id=”attachment_723″ align=”alignnone” width=”300″]エッジの比較 クーパービジョン社と他のメーカーのエッジの比較。[/caption]

基本的にエッジが尖っているコンタクトレンズの方が、丸みを帯びているものに比べフィット感が高い(つけ心地がいい)と言われています。しかし、上図のように涙がレンズの内側に入りにくく、涙液交換が行われにくいので、乾きや張り付き感を覚えやすいという難点もあります。

エッジに関してはメーカーによって偏りがあります。たとえば、ジョンソンエンドジョンソンの製品は全体的にエッジがとがっており、クーパービジョンの製品は全体的に丸みを帯びています。

両社の製品は以下のページで一覧できます。

ソフトレンズ一覧

レンズ直径

レンズ直径は文字通りそのコンタクトレンズの直径を数値化したものです。

一般的なソフトコンタクトレンズのレンズ直径は14.0mm程度であることが多く、乱視用になるとやや大きめになり、14.5mm以上のものも出てきます。カラーコンタクトレンズも、着色部分を要する分、レンズ直径が大きいものが多いです。

含水率

そのレンズがどれだけ水分を含んでいるか、という値です。

一般的に、水分を多く含んだレンズはつけた瞬間のうるおい感が高く、つけ心地がやわらかくなっています。しかしその反面、乾きや汚れには弱いと言われています(レンズの作りによっては一部例外もあり)。

「何で水分が多くなると乾きに弱くなるの?」と疑問に思った方は、以下の記事を参考にしてみてください。

ソフトコンタクトレンズにおける「含水率」とは?

コンタクトレンズの含水率は50%を境に低含水、高含水と分かれます。

酸素透過率

つけ心地にはまったく影響しない値です。しかし、眼の健康には深く関わってくるので、とても重要な値です。個人的には、レンズ選びの主軸にしてほしいくらいの値ですね。

酸素透過率は、Dk/L(ディーケーエル)という単位で表されます。この値は高ければ高いほど、酸素をよく通し、眼にかかる負担が少ない、ということになります。

酸素透過率はコンタクトレンズの素材により大きく変わります。現在主流のシリコーンハイドロゲル素材は、従来素材に比べ酸素透過率が高く、その値は3~5倍にも及びます。

シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズは従来素材のものに比べ付け心地がやや硬めという難点がありますが、それが気にならないようであれば、眼の健康のためにも積極的に使っていきたいところですね。

各コンタクトレンズの酸素透過率については以下の記事を参考にしてみてください。

ソフトコンタクトレンズ酸素透過率ランキング

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