老眼が回復したり、治療できたりするサプリメントなんてあるわけないじゃないですか

ネギを差し出す医師

「老眼が回復したり、治療できたりするサプリメントなんてあるわけないじゃないですか」

私の勤務している眼科の院長がよく言っていることです。私も同意見なので、ちょっとシェアしてみようかと思います。

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老眼サプリメントのキャッチコピーは本当か

「老眼を回復する」あるいは「治療する」といったキャッチコピーのサプリメントが流行っています。完全に回復する治療すると言い切ってなくても、それに準ずることを言っていれば同じです。

でも、実際のことを言わせてもらうと、老眼を回復したり治療できたりするサプリメントなんてこの世には存在しません。少なくとも、今の時代においては。

別に、サプリメントに限らず、いかなる方法でも老眼を回復したり治療することは難しいと思います。

老眼というのは、言ってしまえば身体の老化の一症状です。筋肉や内臓などの老化を回復・治療できる方法が未だ見つかってされていないのに、どうして、同じ体の一部である眼だけが老化を回復・治療できるのでしょう。少し落ち着いて考えれば、それが不可能であるということは誰にでもわかります。

老眼を食い止めるトレーニングなどにも、近いことが言えます。もちろん老眼トレーニングにも実にさまざまな形があるので(もちろん私が知らない方法もたくさんあると思うので)、その全てに効果がないと言いきることはさすがにできません。

でも、どんな老眼トレーニングも、誰もが納得できるような医学的根拠を提示できるかといえば、おそらく無理でしょう。どんなに確立したトレーニング方法でも、「こうすれば老眼を食い止められるかも」「回復・治療できる可能性が高い」という段階でしかないはずです。

老眼サプリメントや老眼トレーニングの案内には、必ずと言っていいほど「実際に○○人が老眼を回復した」などといった文言や、すごいポジティブな内容の使用者感想が付加されていますが、それがあることと信憑性が高いといこととはイコールではありません。

宣伝文句なんて誰にでも自由に設定できますしね。わざわざ自分の商品に「効果があるかどうかはわからない」なんて説明文をつける人はいませんからね。

じゃあ老眼を回復・治療できるサプリメント全部嘘?

「老眼」だけを回復・治療できるかという意味でいえば、嘘です。いや、嘘と言い切ってしまうのは良くないかな。でも、サプリメントの効能と老眼の回復が直結することは、ほぼないのではないかと思います。

じゃあ老眼回復を唄ったサプリメントを製造している業者が全部詐欺師かといえば、そういうわけではありません。確かにその手のサプリメントには眼のシステムを回復・治療する効果があります。でもそれは、「老眼」ではありません。

例えば老眼に関するサプリメントを調べるとよく目にする耳にする「ルテイン」。ほぼ100%と言っていいほど、老眼サプリメントに入ってますね。

でも、ルテインに老眼を回復したり治療したりする効果はありません。そもそもルテインは「眼の機構を回復する効果のある栄養素」ではなく、「眼の中にあることが望ましいとされる天然色素」です。

ルテインは光の浸透を遮る役割を持っているので、これが水晶体や黄斑(網膜の中に存在する視力に深く関わる部分)にたくさん存在すると、紫外線やブルーライトなどといった強いエネルギーを持つ光から目の機能を守ることができるのです。

ルテインと一緒によくサプリメントに入っているものに「ゼアキサンチン」というものがありますが、これはルテインの異性体(同じ分子式をもちながら、異なった物理的・化学的性質をもつ化合物)なので、ほぼルテインと同じようなものです。当然、ゼアキサンチンにも老眼を回復・治療する効能はありません。

サプリメントによりルテインとゼアキサンチンを摂取すれば、水晶体や黄斑に強い光の侵入を防ぐフィルターを形成することができるので、確かにスマホやPCなどを見すぎることで生じる眼の疲れ、俗に言うところの「スマホ老眼」を防ぐことはできると思います。

でもスマホ老眼はあくまでスマホ老眼であって「老眼」ではありません。水晶体の硬化や毛様体筋の衰絵によってピントの合う位置が徐々に近くにピントを合わせられなくなっていく、真の意味での「老眼」に対しては、ほとんど無力なのです。

というわけで、老眼に効くサプリメントを買おうかどうかで悩んでいる人は、今一度、自分が買おうとしている老眼サプリメントに、本当に自分が求める効能があるかどうかということを確認してから買うようにしてください。その方が、後で「騙されたー」って気持ちになることはなくなると思います。

ちなみに……

余談ですが、これだけ記事の中であれこれ言っておきながら、実は私も眼のサプリメントを飲んでいます。

こんなやつです。

テレビ番組でも取り上げられたことのある、さくらの森の「目なり」です。
老眼の症状を緩和してくれる、と評判の製品ですね(回復、治療とは違います)

ただ、私がこのサプリメントを飲んでいるのは、老眼対策のためではありません。あくまで加齢黄斑変性症の予防のためです。

加齢黄斑変性症とは?
加齢や紫外線の蓄積など様々な原因により、視力を司る網膜上の黄斑という機関に障害が生じる病気。進行すると視覚機能に重大な支障を及ぼす。失明の原因にもなり、欧米では成人が失明する原因の第1位(日本では4位)になっている。

眼科で働いていると、加齢黄斑変性症で苦しむ高齢者の方をよく見かけます。ある程度進行すると、視界の一部が歪んだり、欠損したりと、無視できない症状が出てきて、失明に至る可能性もあります。

一度なってしまうと完璧に治療することが難しく、ある程度進行すると、どれだけ治療しても良好な視界を取り戻すことができなくなります。

つまり、予防することが何よりも大切だということ。

ルテインやゼアキサンチンには老眼を治療・回復する力はありませんが、この病気の発症を防ぐためには高い効果を発揮してくれます。

そしてそれはサプリメントで簡単に摂取できる。

日頃からこの病気の恐ろしさを目の当たりにしている私からすれば、たった月数千円の出費がその予防になるのであれば、安いものです。

眼の疲れを抑えてくれたりなど、副次的な効果もありますしね(本当はそちらがメインの効果なのでしょうが)

最高のアイケアを目指したサプリメント「めなり」

再度断っておきますが、これは老眼を治療・回復するためのサプリメントではありません。そのことはどうかお間違えのないように。