Dk/l値200以上の高酸素透過性レンズは作れない?

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コンタクトレンズには、そのレンズがどれだけ酸素を通すかを表す酸素透過率という値があります。これは、Dk/L(ディーケーエル)という値で表されます。

瞳は人と同じように呼吸をしているので、当然、この数値は高ければ高い方がいいです。これは、しっかり酸素が供給できていないと瞳が酸欠状態になってしまい、角膜の細胞が死滅する原因になってしまうからです。

最近では、従来素材に比べ、酸素をよく通すシリコーンハイドロゲル素材が主流になっています。従来素材を用いたコンタクトレンズの酸素透過率が高くて40Dk/L程度なのに対し、シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレレンズのDk/Lは100を超えるものも多いので、その差は圧倒的です。

ところで、酸素透過率はどこまで高くすることができるのでしょうか。Dk/L100となると結構高い値ですが、Dk/L200を超える超酸素透過性レンズも実現可能なのでしょうか。

眼科にて患者さんからそんな疑問を受けてたので、今回は、Dk/Lの限界値について書いてみようと思います。

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現在、最も酸素透過率が高いのはHOYAのエアリーワンマンス

現在、日本で一般的に出回っているソフトコンタクトレンズの中で最も酸素透過率が高いのは、HOYAという会社が製造・販売している「エアリーワンマンス」です。そのDk/L値はなんと184! …と言われてもあまりピンと来ないかもしれませんが、これは相当高い値です。

例えば、知名度が高く、広く普及している「ワンデーアキュビュー」や「2ウィークアキュビュー」が33.3Dk/L、販売店最大手のアイシティ積極的に販売している「プロクリアワンデー」が22.4Dk/Lだということを踏まえると、エアリーワンマンスの184という値がいかに高いかがわかると思います。

なぜ同じソフトコンタクトレンズなのに酸素透過率にこれだけの差が出るかというと、ここで素材が関係してきます。ワンデーアキュビューやプロクリアワンデーはHEMAと呼ばれる素材(従来素材)を使用してますが、エアリーワンマンスはシリコーンハイドロゲル素材を使用しています。シリコーンハイドロゲルは、酸素透過性の高く眼に健康的であることから、HEMAに代わる主流なコンタクトレンズ素材になりつつあります。

もちろん、アキュビュー・シリーズを製造しているジョンソンエンドジョンソン社もシリコーンハイドロゲル素材を用いたコンタクトレンズを製造しています。1dayの「ワンデーアキュビュートゥルーアイ」と「2weekのアキュビューアドバンス」「アキュビューオアシス」です。

具体的なDk/L値は以下の通り。

  • ワンデーアキュビュートゥルーアイ:118Dk/L
  • アキュビューアドバンス     :85.7Dk/L
  • アキュビューオアシス      :147Dk/L

アドバンスはやや古い製品なので他の2つに比べると酸素透過率は低めですが、トゥルーアイ、オアシスは申し分ない値を持っています。

ただ、これらと比べてもエアリーワンマンスのDk/L値は高いですね。

基本的に、ソフトコンタクトレンズは一枚辺りの寿命が長い方が、酸素透過率が高くなる傾向にあります。

ただ、2weekや1monthは汚れの蓄積により徐々に酸素透過率が下がっていくので、毎日新しいものに取り替えられる1dayの方が長い目で見ると有利という考え方もあります。

Dk/L値200以上の高酸素透過性レンズは作れないのか

では、ここからが本題です。Dk/L値200以上のレンズは作れないのか。

結論から先に言ってしまうと、作ること自体は可能です。

つまり、ほとんど裸眼に近いような、負担の極度に少ないレンズを作ることは可能なようです。

しかし、Dk/L値200を実現しようとした場合、レンズの素材はシリコーンハイドロゲルではなく、純粋シリコンになります。

では、純粋シリコンになるとどうなるのかと言うと、シリコーンハイドロゲルからハイドロゲル(ゲルの状素材)を抜き取ることになるので、レンズは硬くなります。ソフトコンタクトレンズのいちばんの強みである装用間の良さがなくなってしまうので、あまり意味がありませんね。

普通、シリコーンハイドロゲル素材のレンズを作る場合、手順は逆になります。最初に純度100%のシリコーンを用意して、それにどれだけハイドロゲルを混ぜるか、という順番でレンズが作られていきます。

当然、ハイドロゲルを多くした方がレンズは柔らかくなります。しかしハイドロゲルを多くしすぎると、酸素をよく通すシリコンの割合はごくわずかになってしまうので、レンズが酸素をあまり通さなくなってしまいます。

レンズの酸素透過性を優先するか、柔らかさを優先するか、そのジレンマの中で、シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズ製造は行われているというわけです。

ちなみに、数あるレンズの中で最高クラスの酸素透過性を持つエアリーワンマンス最も大きな弱点は硬いことです。その硬さが嫌でエアリーワンマンスを付けられないという方もいます。

やや乱暴な言い方をすれば、エアリーワンマンスはとにかく高い酸素透過率の値を出すためにシリコンの割合が過剰になり、その分硬くなってしまったというわけですね。

まとめ

以上のことを踏まえ、「200Dk/L以上のコンタクトレンズは作れるか」という問いに答えると、以下のようになります。

Dk/L値200以上のレンズを作ることは理論上可能ですが、
実用性のことを考えるとあまり現実的でない。

作れるは作れる、でも作ってもあまり意味がないというのが実際のところでしょうか。

とはいえ、これからコンタクトレンズ業界にどんな新しい素材が出てくるかは未知数なので、シリコーンハイドロゲルよりもさらに酸素を良く通す素材が開発されれば、装用感がよくてDk/L値200以上という夢のようなレンズも登場するかも知れません。

参考ページ

当サイトではすべてのソフトコンタクトレンズの酸素透過率をランキングした、「ソフトコンタクトレンズ酸素透過率ランキング」というものを用意しています。この記事で紹介したエアリーワンマンスやアキュビューオアシスなどについても記載しているので、興味がある方は参考にしてみてください。

ソフトコンタクトレンズ酸素透過率ランキング