アメーバといえば有名なブログ運営会社……ではなく、誰もが知っているあのぐにゃぐにゃとした単細胞生物。そのアメーバの一つに、「アカントアメーバ」と呼ばれるものがいることをご存知でしょうか。
このアカントアメーバは基本的には無害な生命体ですが、「ある条件」が揃ってしまうと、「アカントアメーバ角膜炎」という厄介な病気の原因になってしまいます。
その「ある条件」とは何なのか。
「コンタクトレンズの使い方が深く関係している」なんて言ったら、ヒヤッとしてしまう方もいるのではないでしょうか?
目次
アカントアメーバってどんな生き物?
(出展:meddic)
アカントアメーバは、基本的に無害な生命体で、土の中や淡水の中など、私たちが比較的接触しやすい場所に多く生息しています。実は家の中にもいて、浴室や洗面所など、水気のある場所を好み生息しています。
身近な生物なので、私たちも日常生活の中で体内に取り込んでしまうことがあります。場合によっては、眼に入ってしまうこともあるでしょう。
しかし、アカントアメーバがただ眼に入っただけ角膜炎が起こることは稀です。なぜならアカントアメーバは健康な角膜になかなか付着できないからです。普通は涙によって眼の外へと流し出されてしまいます。
アカントアメーバ角膜炎が起こる原因
アカントアメーバは健康な角膜になかなか付着できません。なぜなら、健康な角膜の表面はツルツルしているからです。たとえ一時的に付着することができたとしても、角膜の表面に涙が流れたり、瞼によってぬぐわれたりすれば、アカントアメーバは角膜に害を及ぼすことはできません。
しかし、角膜に傷ができてしまっていた場合、話は別です。角膜にできた傷は、アカントアメーバが角膜に付着するための足場となります。
角膜上で増殖したアカントアメーバはやがて病巣(びょうそう)というものを形成します。この病巣こそが、アカントアメーバ角膜炎の原因であり、正体なのです。
アカントアメーバの症状
アカントアメーバの主な症状は、以下のとおりです。
- 疼痛(感染の進行により痛みが増す)
- 充血
- 角膜上の異物感
- 流涙(涙が止まらなくなる)
- まぶたの腫れ
- 視力低下
- 視界のぼやけ
主な症状は疼痛(とうつう)と充血です。病気の進行により、それに加え別の症状が出てくるといった感じですね。
初期段階であれば目薬や内服薬で症状を緩和、治療することができます。
アカントアメーバと失明
この記事のタイトルにもなっていますが、アカントアメーバ感染炎は最悪の場合失明にもつながる病気です。
たいていの場合はそうなる前に何らかの対処をすることになると思いますが(痛みがひどくなるので)、失明の可能性を孕んだ危険な病気であることは間違いありません。充分に注意しましょう。
ソフトコンタクトレンズとアカントアメーバ角膜炎
ハードコンタクトレンズもそうですが、水分を多く含むソフトコンタクトレンズは、アカントアメーバにとってより住みやすい環境です。レンズのケアが不十分だったり、使用期限が切れたものを無理に使っていたりすると、レンズ上でアカントアメーバが増殖してしまう可能性があります。
アカントアメーバが住み着いたレンズを使い続けることは、当然、アカントアメーバ角膜炎になるリスクを高めます。そうならないようにするための対策法を次の項目で紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
コンタクトレンズレンズユーザーが徹底すべき、失明しないためのアカントアメーバ対策
初期状態のアカントアメーバは点眼や内服薬などでわりと簡単に治療できますが、重度になると対処が困難になります。症状を感じたら、できるだけ早めに眼科に行き、眼科医の指示を仰ぎましょう。
ただ、可能な限りは未然に感染を防ぎたいものです。以下の点に気をつけて、レンズを取り扱うようにしてみてください。
コンタクトレンズを付けたまま寝ている
コンタクトレンズを付けたまま寝るのはとても危険。レンズ内で雑菌が増殖したり、角膜に傷がついたり、角膜を酸欠状態にしてしまいます。寝る前は必ずレンズをはずすようにしましょう。
清潔な手でコンタクトレンズを扱う
コンタクトレンズは眼という重要な器官に直接取り付けるものです。清潔な状態の手で取り扱いましょう。基本ですね。
こすり洗いをしっかりと行う
こすり洗いタイプの洗浄液を付け置きタイプの洗浄液だと勘違いしている方はかなり多いです。「すすぎ・消毒・保存がすべて行える」と表記されているこすり洗いタイプの洗浄液も少なくありません。気をつけましょう。
レンズのケア不足はアカントアメーバを増殖させるいちばんの原因になります。こすり洗いが大変であれば(どうしても雑になってしまうようであれば)、若干値段は張りますが、付け置きタイプの洗浄液を使ってみましょう。
使用期限をしっかりと守る
1dayを2日以上使ったり、2weekを1ヶ月近く使ったりと、そのコンタクトレンズに本来定められている使用期限をオーバーして使っている方はとても多いです。
コンタクトレンズの使用日数のオーバーは、アカントアメーバ角膜炎だけでなく、角膜に傷を作ったり、アレルギー性結膜炎を引き起こしたりする原因になります。絶対にやめましょう。
なるべく1dayを使う
2weekや1monthがダメだと言っているわけではありませんが、1dayは毎日新しいものを使えるので、アカントアメーバ角膜炎を始めとする眼障害が起こるリスクを減らせます。経済的に余裕があれば、なるべく積極的に使っていきたいですね。
プールには2weekや1monthを付けて入らない
社会人になるとプールに入る機会も少ないかもしれませんが、もしプールに入る場合は、裸眼か、1dayで入るようにしましょう。プールの水の中にはさまざまな雑菌が生息しています。コンタクトレンズを付けたままプールに入ると、それらの雑菌を連れて帰ることになってしまいます。
1dayならその日のうちに捨てられるのでまだいいですが、2weekや1monthなど繰り返して使うタイプのレンズは、消毒しても、レンズ内で雑菌が生き残ってしまう場合があります。アカントアメーバがいれば角膜炎につながるかもしれません。
プールに入る時はなるべく裸眼、付けても1dayにするようにしましょう。
言うまでもありませんが、川で泳いだりする場合も同様です(稀なケースですが)。
コンタクトレンズのケースもしっかり洗う
コンタクトレンズの保存ケースも常に清潔にしておきましょう。新しく液を注ぐ時は、レンズのケースを取り出し、水できちんとケースを洗浄してから注ぐようにしてください。
一度使った液は消毒力が下がっているので、そこへ新しい液を継ぎ足してもあまり高い消毒効果が得られません。それどころか、液中で雑菌が繁殖している可能性があります。必ず新しい液を使うようにしましょう。