眼科でコンタクトレンズを処方しているとたまにこんなことを聞かれます。
「コンタクトレンズの処方箋で眼鏡も作れるの?」
コンタクトレンズと同じ度数で眼鏡が作れたら、手間を減らすことができて便利ですよね。でも、実際それって可能なのでしょうか。この記事では、そんなコンタクトレンズと眼鏡に対する疑問についてお答えしていきたいと思います。
コンタクトレンズの処方箋で眼鏡も作れるの?
さて、いきなり本題ですね。もったいぶっても仕方がないので結論から先に言ってしまいましょう。答えはノーです。コンタクトレンズの度数がわかっていても、同じ度数で眼鏡を作ることはできません。
その理由は三つあります。
- 眼からレンズまでの距離が違う
- コンタクトレンズには眼の幅という概念がない
- 乱視の問題
これら三つの理由について、それぞれ詳しくまとめていきます。
眼からレンズまでの距離が違う
コンタクトレンズと眼鏡では、眼からレンズまでの距離が違います。コンタクトレンズは眼にぴったりとくっついていますが、眼鏡は黒目の頂点から12mmほど離れたところにレンズがあります。
たかだか12mmの差と思うかもしれませんが、コンタクトレンズや眼鏡は、光を屈折させることによって度数差を生み出すので、この12mmでもコンタクトレンズと眼鏡のあいだで多少の誤差が生じてしまいます。
基本的には、眼に密着している分、同じ度数でもコンタクトレンズの方が視力が出やすいと言われています。つまり、コンタクトレンズの度数で眼鏡を作ってしまうと、多少見え方が弱くなってしまうということですね。これは逆にも言えます。眼鏡の度数でコンタクトレンズを作ってしまうと、度数が強めになり、疲れが生じやすくなってしまいます。
コンタクトレンズには眼の幅という概念がない
左右の眼の間隔は人に寄って大きく異なるもの。二枚のレンズがブリッジによって繋がれている眼鏡にとって、眼の幅の測定はかかせないものです。しかし、レンズが個々に存在するコンタクトレンズにはその必要がないので、基本的に、コンタクトレンズの処方箋には記載されません。
乱視の問題
乱視に対する考え方も、コンタクトレンズと眼鏡とでは大きく異なります。たとえばハードコンタクトレンズは眼に入れるだけでほとんど乱視を打ち消してくれますし、ソフトコンタクトレンズは眼鏡ほど正確に乱視を矯正することができません。コンタクトレンズの処方箋に書かれた乱視のデータでは、眼鏡を作る際の乱視データとしては不充分です。
眼鏡を作るには眼鏡の処方箋が必要
以上三つの理由の理由から、眼鏡の処方には眼鏡の処方箋が必要になることがわかっていただけたと思います。では、眼鏡の処方箋はどこでもらえるのかと言えば、もちろん、眼科でもらうことができます。
ただし、絶対必要というわけではない
眼鏡を作るために眼鏡の処方箋が必ず必要というわけではありません。処方箋がなくても、眼鏡屋に行けばそのまま作ることができます。実は眼鏡の処方箋って、厳密に言うと処方箋ではなくてただのデータ表なんです。詳細については以下の記事を読んでみてください。コンタクトレンズ処方箋に関する記事ですが、眼鏡処方箋にも共通する内容になっています。
眼鏡処方箋はあくまでデータ表、持ってなくても眼鏡を作ることができる……となれば、眼鏡の処方箋が存在する意味はどこにあるのでしょう。その答えは、眼鏡屋では行なえない複雑な視力矯正が必要になる方がいるからです。たとえば斜視などがそうですね。遠近両用の度数調整なども、眼鏡屋でやるよりは眼科でやった方が正確な矯正が期待できます。